私は麻雀を覚えるずっと前から、「ポン」「チー」という言葉だけは何となく聞いたことがありました。テレビか漫画で耳にしたのだと思いますが、意味はまったく分かっておらず、実際に麻雀を覚えたときに「あの言葉はこういう意味だったのか」と腑に落ちたのをよく覚えています。実は、卓上で飛び交う発声や待ちの形の名前は、そのほとんどが中国語に由来していて、元の字の意味を知ると一気に覚えやすくなります。語源・由来まとめの第4弾となる今回は、「ポン」「チー」「カン」「ロン」「ツモ」といった発声と、「リャンメン」「カンチャン」などの待ちの形の名前の由来を紹介します。
ポン・チー・カン|鳴きの発声は中国語
他家(ターチャ)の捨て牌をもらって面子(メンツ)を作ることを「鳴き」と言いますが、そのときの発声であるポン・チー・カンは、いずれも中国語がそのまま日本に持ち込まれた言葉です。漢字と意味を並べてみると、こうなります。
- ポン=碰:「ぶつかる・出くわす」の意味。自分の対子(トイツ)に同じ牌がぶつかって刻子(コーツ)になる、と考えると字のイメージそのままです
- チー=吃:「食べる」の意味。他家の捨て牌を食べて順子(シュンツ)を作るわけです
- カン=槓:字そのものは「てこ・棒」を指します。ただ、なぜ4枚揃えにこの字が当てられたのかは、はっきりした説明が残っていません
面白いのはチーです。麻雀では鳴くことを「食う」と言ったり、鳴くと役の翻数が下がることを「食い下がり」と言ったりしますが、この「食べる」というイメージは吃の字義とぴったり重なります。普段なにげなく使っている言い回しの奥に、中国語の「食べる」が透けて見えるわけです。
3つの鳴きの使い分けはチー・ポン・カンの使い分けで詳しく説明しています。また、カンで作る4枚の面子は槓子(カンツ)と呼び、暗槓・明槓といった種類や手順はカンの解説記事にまとめています。
ロンとツモ|アガリの発声
アガリの発声も見てみましょう。
ロンは、正式には栄和(ロンホー)と言い、他家の捨て牌でアガることを指します。ロンは「栄」の字の読みです。実は、本場中国の麻雀では出アガリとツモアガリを発声で区別せず、どちらも「和(フー)」と言うのが一般的とされています。日本の麻雀では、ツモアガリは全員から、ロンアガリは振り込んだ人だけから点数をもらうという支払い方の違いがあるため、発声もはっきり区別する形が定着しました。なぜ「栄」の字が選ばれたのかについて、はっきりした記録は残っていませんが、文字どおり「栄えるアガリ」と覚えておけば十分だと思います。
一方のツモは漢字で「自摸」、ツモアガリの正式名称は自摸和(ツモホー)で、ロンの栄和ときれいに対になっています。摸の字には「手で軽く触れる・さぐる」という意味があり、そこから山の牌を引く行為を「摸る(ツモる)」と呼ぶようになりました。自摸=自分で摸ってアガる、という意味どおりの言葉です。「ツモ切り」「ツモ番」といった用語も、すべてここから広がっています。
なお、同じ捨て牌に2人が同時にロンを宣言する「ダブロン」は、ダブル+ロンを縮めた言葉。英語と組み合わさった、日本の卓上らしい呼び名です。
テンパイ・ノーテン・フリテン|「聴」の字でつながる仲間
あと1枚でアガれる状態を指すテンパイは、漢字で「聴牌」。これも中国語由来で、中国の麻雀では今も同じ言葉が使われています。日常語の「テンパる」がこの聴牌から生まれた話は、語源①で紹介したとおりです。
テンパイしてもあえてリーチをかけずに黙っている状態はダマテンと呼ばれ、漢字では「黙聴」。「闇聴(ヤミテン)」という言い方もあります。黙って聴牌している、見たままの名前です。
テンパイしていない状態を指すノーテンは、「ノーテンパイ」の略で、漢字では「不聴」とも書きます。カタカナの「ノー」は英語のnoそのもの。中国語生まれの「聴」と英語の「ノー」が合体した、考えてみればずいぶん折衷的な言葉です。ノーテンのまま流局を迎えたときの罰符については、ノーテン罰符の解説にまとめています。
そしてフリテンは漢字で「振聴」。自分の捨て牌の中にアガリ牌があるなどの理由で、ロンアガリができなくなっているテンパイのことです。麻雀では、相手のアガリ牌を捨ててしまうことを「振り込む」「振る」と言いますが、振聴の「振」も同じ字。「自分が振った牌で聴牌している」という字面になっています。詳しい条件と回避方法はフリテンの解説記事へどうぞ。
待ちの形の名前|両面・嵌張・辺張・双碰・単騎
テンパイしたときの待ちの形にも、それぞれ名前が付いています。これも字の意味を知ると、名前がそのまま形の説明になっていることが分かります。
- 両面(リャンメン):四・五の並びで三と六を待つような形。文字どおり「両方の面」で待つから両面です
- 嵌張(カンチャン):四・六で五を待つような形。嵌は「はめ込む」の意味で、2枚の間に1枚をはめ込む形から
- 辺張(ペンチャン):一・二で三、八・九で七を待つ形。辺は「はし」のことで、数牌の端にかかった待ちです
- 双碰(シャンポン):対子2組で、どちらかの3枚目を待つ形。双は「ふたつ」、碰は先ほどのポンと同じ字です。「どちらが来てもポン(刻子)の形になる待ち」と考えると、名前の意味が形の説明を兼ねています。シャボ待ちとも呼ばれます
- 単騎(タンキ):雀頭(ジャントウ)候補の1枚だけでアガリ牌を待つ形。文字どおり「ただ一騎」で、最後の1枚が単独で待つ姿によく合った呼び名です
両面が「良形」、嵌張・辺張が「愚形」と呼ばれるのは待ち牌の枚数の差によるものですが、名前そのものは形の姿を写したものです。ちなみに、嵌張・辺張の「張(チャン)」は、中国語で牌や紙のような平たいものを数えるときの単位です。「はめ込む牌の待ち」「端の牌の待ち」。名前の作りはとても素直です。それぞれの待ちの形に付く符は符計算の記事で、単騎待ちの使いこなしは単騎待ちの解説記事で扱っています。
まとめ
今回のポイントを整理します。
- ポン=碰(ぶつかる)、チー=吃(食べる)、カン=槓(てこ・棒)と、鳴きの発声はすべて中国語由来
- ロンは栄和(ロンホー)の略。中国では発声を区別せず「和(フー)」が一般的で、発声で区別するのは日本で定着した形
- ツモ=自摸は「自分で摸(さぐ)ってアガる」の意味そのまま
- テンパイ(聴牌)・ノーテン(不聴)・フリテン(振聴)は「聴」の字でつながる仲間
- 両面・嵌張・辺張・双碰・単騎は、字の意味がそのまま待ちの形の説明になっている
麻雀を知る前は意味の分からない呪文のようだった「ポン」「チー」も、字を知れば「ぶつかる」「食べる」。由来が分かると、用語は不思議と頭に残るようになります。語源シリーズは①「平和」「ドラ」「リーチ」編、②牌の名前編、③役名編も公開していますので、あわせてどうぞ。
麻雀用語に慣れる近道は、やはり実戦で数をこなすことです。
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